映画『ヘアスプレー』に描かれる黒人差別

出演者たちと監督。Jose Gil / Shutterstock.com

映画『ヘアスプレー』は、歌とダンスが大好きで明るく元気な白人の女の子、トレイシーを主人公としたミュージカル映画です。

トレイシーはティーンに人気の音楽番組 『コーニー・コリンズ・ショー』 にあこがれていて、番組に出演するのを夢見ています。しかし、太っていることが理由で番組のオーディションに落選してしまいます。

ある日、トレイシーは放課後の居残り教室でシーウィードをはじめとする黒人たちと知り合い意気投合。 彼らに教わったR&B調のステップを取り入れたダンスが、番組の主催者であるコーニーの目に留まり、見事デビューを果たします。

映画の中の黒人差別

この作品の舞台は 1962年、まだ黒人差別が色濃く残るアメリカです。

しかしトレイシーは持ち前の天真爛漫さで、白人と黒人の間にある壁を飛び越えていきます。 黒人と白人の人種間の問題だけでなく、体型や年齢などのしがらみも、まったく気にしません。

そんなトレイシーからは、1960年代という新しい時代に向かうわくわくした気持ちが感じられます。

『コーニー・コリンズ・ショー』内でも黒人は差別されています。
黒人が番組に出演できるのは月に一度のブラック・デーのみで、他の日には出られません。さらに、せっかくのブラック・デーすらも黒人への差別感情が強いプロデューサーによりぞんざいに扱われています。

番組の司会者コーニーがトレイシーをスカウトしたパーティー会場のダンスフロアも、白人と黒人の間はロープで区切られています。

シーウィードをはじめとする黒人たちは自分たちのスタイルに誇りを持っています。「今は肌の色が邪魔をしているけれど、世界は愛にあふれていて平等のはず!」と歌うシーンは、自信に満ち溢れています。 誰に何を言われても「差別解消は一歩ずつ…ドアは少しずつ開く」と耐えているのです。

誰とでも分け隔てなく接するトレイシーに刺激されて黒人差別の撤廃を主張 するコーニー。

しかし、プロデューサーに反対されてしまい、ブラック・デーそのものがなくなってしまうというピンチに陥ります。そこで、トレイシーの提案により、シーウィードを中心として黒人達はテレビ局の前まで、差別の撤廃を訴えるデモ行進をします。トレイシーらを番組に出演させまいとするプロデューサーや警官らの妨害を乗り越えて、トレイシーがさっそうとスタジオに現れるシーンは必見です。

また、今作では当時タブーとされていた白人と黒人の間の恋愛も描かれています。
恋人同士となったトレイシーの親友ペニーとシーウィードの二人が「わたしたちを止めようとするなら、NCCAP(全米黒人地位向上協会)に電話する!」(You Can’t Stop the Beatより)と歌うシーンは印象的です。
ただ楽しいだけのミュージカル映画ではなく、社会的な要素も取り入れられています。

ラストシーンでは人気の出演者に与えられるミス・ヘアスプレーの発表があります。
電話による投票によって選ばれたのは、当初予想されていた金髪で細身の白人の美くしいプロデューサーの娘ではなく、飛び入り参加したダンスがとびきり上手いシーウィードの妹でした。コーニーにより番組内の人種差別の完全撤廃が高らかに宣言され、肌の色に関係なくみんなで仕切りのない同じフロアで歌い踊ります。

明るく差別を拒否する勇気

Photo by Isaiah Rustad on Unsplash

人種差別というテーマを取り扱っている映画ですが、トレイシーのキャラクター、素晴らしい音楽、色使いなどによって、老若男女が楽しめるものとなっています。

シーウィードの家へ招待された時も「黒人街へ招待されるなんてあたしたちススんでる!」と無邪気に喜び、当時の常識や周りの目を気にせず、「いいものはいい!」と肯定できるのはトレイシーの一番の強みであるといえるでしょう。

人種差別だけでなく、すべてのマイノリティの人々に勇気を与えてくれる作品です。
家族で鑑賞するのもおすすめです!

また、この映画『ヘアスプレー』はもともとはミュージカル劇の作品です。
ストーリーなど少し違う部分もあるようなので 、気になった方はそちらもチェックしてみてくださいね。

IMDbによる『ヘアスプレー』情報

https://www.imdb.com/title/tt0427327/

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