『いっしょのちがうもの』正しく食物アレルギーの知識を

食物アレルギーってなんだろう？

三省堂ディクショナリーによると、アレルギーとはある物質に対する過敏な反応。種類も様々あります。その中で今回のテーマとなったのが食物アレルギーです。「しょくもつ」アレルギーと読みます。

本来、悪い細菌やウイルスから身体を守るために動き出すのが免疫機能（めんえききのう）。しかし免疫が食物を「悪いもの」と認識してしまって、身体から追い出そうとします。その結果、かゆみ等の皮膚症状から、嘔吐、腹痛、呼吸困難、意識障害等人によって様々な症状が起きます。複数の症状が急激に起きることを「アナフィラキシー」といい、まれにショック症状を起こして命が奪われることもあります。アレルギーを引き起こす原因物質も症状も、個人差が大きいことが食物アレルギーの特徴です。

食物アレルギーを持った人は「食べて良いもの」と「食べてはいけないもの」を把握することがとても大切です。何をどれだけ食べて、どんな反応が起きるのか、をよく知っていなければなりません。もちろん、本人や家族はとても良く知っているでしょう。けれど周りの人も同時にどんな食べ物が危険なのかを把握することが大切です。決して、好き嫌いなどではありません。好き嫌いとは違い、食べると体調を崩してしまうのが食物アレルギーなのです。大人でも成長してから初めて症状が出ることがあります。

食物アレルギーがあるから学校に入れない？

今回の出版記念パーティでは実際に食物アレルギーを持つ子供を育てた二人のお母さんもトークを行いました。１人はこの絵本の監修を行った「食物アレルギーの子を持つ親の会」代表の武内澄子さん。そしてもう一人はこの絵本の主人公、アレックのモデルとなった男の子のお母さんです。

このトークで私たちは衝撃の話を聞きました。「エピペンを所持しているので入学を許可できません」「土曜日の日中にアナフィラキシーショックを起こしたのに、救急医療センターへ搬送できず救急車の中で足止めされた」。これは食物アレルギーを抱える子供を持つ親たちが実際に体験した話です。

エピペンとは、アナフィラキシーショックを起こした人が使う注射です。これを使うと、ショック症状が起きてから医師に見てもらえるまでの短い間は、症状が和らぎます。命を救う注射なのです。もしかしたら注射針が危ないから、という理由かもしれませんが、これは大きな間違い。しっかりと使い方をわかっていれば怪我をすることはほぼ無いのです。

＊エピペンの写真付き解説はこちら

大人たちは、アレルギーの正しい知識と理解の乏しさから、不必要に食物アレルギーの子供の排除をしてしまうようです。子供の中には入学を断られ、遠方まで通わなくてはならないこともあるそうです。学校行事にも「参加できないことで社会の厳しさを教える」といった訳の分からない理由で参加できない。親は皆と同じ教育を受けられないことに悩み苦しみますが、悲しむのは食物アレルギーを持つ子供です。

食物アレルギーを持つ子供は見た目も体力も、他の子供達と何も変わりません。絵本の中でアレックも元気よく跳び箱を飛んでいます。本当ならば遠足や修学旅行だって、皆と同じように参加する事ができるのです。

排除よりも正しい知識で付き合ってほしい

食物アレルギーを持つ子供は常に身の回りの環境を気にしながら過ごさなくてはなりません。特に重症化してしまう子供は細心の注意が必要です。こうした子供が直面するのが外出することです。特に旅行に出かけることがとても大変な作業になってしまいます。

アレルギーにその大変な作業をなるべく取り払い、楽しく過ごしてもらおう！と取り組まれているのが『アレルギー対応ツアー』です。沖縄本島と久米島で取り組んでいます。パーティの終盤ではその沖縄本島でのツアーの様子がスクリーンいっぱいに映し出されました。思い切り楽しむ子どもたちの笑顔はとても光っていました。ご飯も、とても美味しそうに食べていました。

子どもたちは元気。けれど周りの大人が楽しませてくれない、そんな環境があってはなりません。沖縄では特別なひとときを一生の思い出にしてあげよう、とツアーに関わる人皆さんが対処法や緊急時など、「正しい知識」を身に着けて受け入れていました。VTR中のインタビューでもスタッフが「正しい知識を身につければ変に怖がる必要がない」と話していました。一生の思い出を作ってあげようとする人が正しく学び対策をすることができる、なのに教育現場では食物アレルギーの指導がされず、拒否をしてしまう。子供が毎日関わる場所だからこそ、特に教育者が正しい知識を得なくてはならないのではないか、と感じました。

パーティの様子はこちらから！