2018年6月18日、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、シンガポールで会談を行いました。これはアメリカ、北朝鮮史上初めてのことで、全世界に衝撃を与えました。
今回は、米朝首脳会談によってアメリカと北朝鮮の関係がどのように変わっていくか考察していきます。
米朝首脳会談の意義
米朝首脳会談では、北朝鮮が核兵器をすべて破棄することに焦点が当てられました。
北朝鮮としては、核兵器は外交で相手を威嚇する重要カードであり、そう易々と手放せるものではありません。
実際、北朝鮮は今年6月までずっと核兵器破棄を否定し続けていました。 それが一変、北朝鮮が核兵器を破棄するという姿勢を見せたのです。 今回の会談の結果、以下のことが両国で確認されました。 1つずつ確認していきましょう。
1、朝鮮戦争の終結に向けて行動
1950年、冷戦真っ只中の当時、韓国と北朝鮮が戦争を起こしました。これを朝鮮戦争と言います。朝鮮戦争では、韓国にアメリカが、北朝鮮にソ連、中国が味方につきました。
1953年に、現在の韓国と北朝鮮の国境沿いに停戦ラインが引かれ、朝鮮戦争は一旦休戦となりました。
朝鮮戦争はあくまでも休戦状態で、まだ終結していません。この朝鮮戦争に終止符を打つことをトランプ大統領は会談後の会見で強調していました。朝鮮半島の情勢を安定させることがトランプ大統領の狙いです。
朝鮮戦争は、冷戦時代の産物でもあります。冷戦は東西ドイツの統一、ソ連の崩壊によって終結しましたが、朝鮮半島にまだ遺恨が残っています。北朝鮮と韓国が統一されることによって、真の意味で冷戦が終結したと言えるのです。
2、核兵器廃絶に向けた動き出し
トランプ大統領は、北朝鮮に核兵器を廃絶するよう強く迫りました。
北朝鮮の核兵器廃絶はアメリカの悲願です。会談後に発表された共同声明では、「核兵器廃絶に向けて段階的に行動していく」という趣旨が記載されました。この文面を見ると、アメリカが北朝鮮に譲歩したことが伺えます。
急激に核兵器廃絶を行うのは困難とみて、段階的に破棄を進めていくのを認めた形です。
北朝鮮としては、完全にアメリカの言いなりになると周りの国から弱腰と見られてしまう可能性があります。国営放送で、かなり過激な主張を展開してきた北朝鮮ですから、急な手のひら返しは避けたいところです。
核兵器廃絶に向けて北朝鮮を動かすことに成功したのは、会談の大きな成果と言えます。
3、北朝鮮の経済状況は最悪レベル
北朝鮮が核兵器を手放してまでアメリカに要求していることは、経済支援です。
北朝鮮の首都、平壌は別として、それ以外の地域では飢えに苦しんでいる人が大勢います。
そして、深刻な貧困の波は軍人にまで流れてきており、このままだと北朝鮮という国自体が立ち回らなくなります。
下手をすると、軍部が現政権に対してクーデターを起こすことも考えられます。金正恩氏としては経済を回復させ、国内情勢を安定させたいのが本音でしょう。
4、米朝首脳会談の総括
今回の首脳会談の成果は、具体的な行動指針が発表されなかったという点で、内容がやや薄い会談となりました。
会談内容というよりも、「初の米朝首脳会談」という話題性が優先された形です。
北朝鮮に核兵器廃絶に向けた行動を促すことはできましたが、具体的に何を行っていくのかは取り決められてません。
とはいえ米朝首脳が公式に会談したことは、今後歴史の教科書に載るであろう重要な出来事です。
北朝鮮側にとっては、核兵器のカードを失う可能性が高まり、期待していた経済支援の約束をアメリカ側から得ることができなかったので、交渉は今後も継続して行われることが予想されます。
今回の首脳会談のみで、アメリカと北朝鮮の関係が前向きになったとは断言できません。
現在、北朝鮮が核兵器破棄に向けた行動をほとんど進めていないということがアメリカに知られ、米朝関係は再度冷え込んだ状態になっています。
北朝鮮がアメリカとの再会談を模索しているようですが、現状をトランプ大統領が容認するとは考えづらいですね。
5、アメリカと北朝鮮の関係はどうなっていくのか?
米朝関係は、今後の北朝鮮の行動次第で変わっていくことが予想されます。
と言うのも、トランプ大統領は「北朝鮮が核兵器を廃絶しなければ然るべき措置をとる」と明言しています。
北朝鮮の行動によっては、アメリカは北朝鮮との戦争も辞さないという姿勢です。
トランプ大統領は、もともとビジネスマンだったため、自身の利益になるかどうかを最優先に考える節があります。
逆に言えば、利益に沿った行動をとれば、今までの過程をそこまで責めないということでもあります。
北朝鮮の金正恩最高指導者もトランプ大統領の性格は把握しているはずです。だからこそ、今回の米朝首脳会談に踏み切ったとも考えられます。
北朝鮮が核兵器を廃絶すれば、アメリカと北朝鮮の関係は回復し、歴史上に残る和平を結ぶことができるでしょう。
ホワイトハウスからの共同声明(英文)
日本経済新聞 『米朝首脳会談、共同声明の全文』
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO31689760S8A610C1910M00?s=2