1982年に出版された小説『カラーパープル』。1985年にハリウッドで映画化され、2005年には映画を基にブロードウェイでミュージカル化されました。
2024年に日本で公開された映画『カラーパープル』は、ミュージカル版の映画化作品。時間が経っても新しい形で届けられ続ける本作について、考えてみましょう。
ある黒人の少女が逞しい女性になる物語
1909年、アメリカのジョージア州で、主人公セリー・ハリスは男の子を産みます。セリーはまだ10代ですが、二度目の出産です。セリーは父から性暴力を受けており、その末の妊娠でした。赤ん坊は父に取り上げられ、どこかへ連れていかれてしまいました。
その後、セリーはミスターという男性と強制的に結婚させられます。愛ではなく暴力を与えられる結婚生活は、セリーの精神を蝕みます。ある日、セリーの妹ネッティーが父に襲われそうになり、逃げてきます。そのままミスターの家で居候することになりましたが、彼に寝込みを襲われかけます。ネッティーの抵抗に激怒したミスターは彼女を追い出してしまいます。
時は流れて1917年。セリーの元にネッティーからの手紙は一度も届きません。ミスターの息子ハーポの結婚相手、ソフィアが町にやって来ます。勝気な彼女にセリーは圧倒されつつも友情をはぐくみます。しかし、ハーポがソフィアを殴ろうとしたため、彼女は町を去りました。
その後、町にはブルースシンガーでミスターの愛人シャグがやって来ます。自由奔放な彼女にセリーも突き動かされ……。
二重の差別の苦しみ
黒人女性は、二重の差別に苦しんでいるとよく言われます。一つは黒人差別、もう一つは女性差別です。『カラーパープル』を観れば、この二重の差別がよく分かります。
本作の舞台となっている時代は、奴隷解放宣言後のアメリカ。ミスターも、自分たちはもう奴隷ではなくなった、と何度も口にしていました。しかし、彼らは女性を奴隷のように扱っています。
家のことは女性任せ、気に入らないことがあれば殴り、夜にはレイプをします。高圧的で傲慢、女性が口答えをすれば激高します。そんな状況にセリーも、自分たちは未だに男性の奴隷で生き地獄のままだ、と途方に暮れます。嫌でも女性差別のひどさを痛感させられます。
一方で、黒人差別についても映画では描かれています。ある日、ソフィアは町長の妻からメイドに雇ってあげる、と言われますが、断ります。彼女の返事に激高した町長がソフィアを殴ると、ソフィアも殴り返します。白人男性たちは暴行を加えながらソフィアを取り押さえ、彼女は6年間牢屋に入れられてしまいます。
勝気で明るい性格のソフィアの絶望した様子は、どれだけひどい扱いを受けたのかをまざまざと伝えてくれます。
知って、学んで、考えよう
黒人女性への差別は、昔の話ではありません。最近でもブラック・ライブス・マターが話題になったように、現在進行形で続いている話なのです。そんな中で私たちができるのは、まずは知ることです。
知って、学んで、そしてどうやったら改善できるか、考えてみましょう。『カラーパープル』にはそのためのヒントが、たくさん詰まっています!
参考ページ
映画『カラーパープル』公式サイト|大ヒット上映中 (warnerbros.co.jp)
カラーパープル (集英社文庫) https://amzn.to/3VVHA7g