世界で最も有名な女性作家のひとりである、ジェイン・オースティン。イギリス文学といえば必ず彼女の名前が挙がります。更に、現代の恋愛作品の土台を作ったのも彼女の作品だと考えられています。
そんな彼女の名作の一つと言われるのが、1814年に出版された『エマ』です。映画『クルーレス』は、『エマ』を90年代アメリカの高校を舞台に書き換えて作られました。
ヒロインはちょっぴり勘違いしがちな女の子
アメリカのセレブ街に住む高校生シェールは、父親と二人で暮らしています。彼女はファッションやショッピング、パーティやデートに興味深々です。その一方で、彼女にはどこか世間知らずでピュアな一面があります。そんな彼女を、元義兄のジョシュは気にかけていました。
ある日、シェールのクラスに転校生のタイがやって来ます。タイは見た目に気を使うタイプではないと考えたシェールは、彼女を自分のような人気者に変身させようと思いつきます。そして見事、タイは変身を遂げました。すると、シェールは彼女を学校の人気者エルトンをくっつけようと計画します。しかし、エルトンはタイではなくシェールに近づこうとします。こうして、シェールの計画は失敗に終わりました。
シェールの高校に新たな転校生クリスチャンがやって来ます。彼こそ自分の恋人にふさわしい、とシェールは考えます。彼女はあの手この手で彼の気を惹こうとしますが、なぜかうまくいきません。そして、シェールはようやくその理由を知ります。実は、クリスチャンは同性愛者だったのでした。シェールの計画はまたも失敗します。
学校ではすっかりタイが人気者になっていました。反対にシェールは何もかもがうまくいかなくなっていきました。動揺した彼女は自分を見つめ直そうと思い立ちますが……。
真の姿を見抜くには
人間、誰しも勘違いをしてしまうものです。特に、他人がどういう人か見抜くのはとても難しいことです。失敗を繰り返して人生経験を積めば、多少は人の本質を見抜く方法が身につきはします。しかし、必ずしもそれが成功するとは言えません。その人の真の姿を見抜くのはとても難しいことです。
『クルーレス』のシェールも、その方法を身につけようとする一人です。彼女は自身の周りの様々な人を「こういう人」とすぐに決めつけてしまっていました。相手のことをきちんと理解する前に、自分の中で相手の物語を作り上げてしまうのです。
善意から人と人同士を結び付けようとしますが、多くの場合でそれに失敗します。この失敗は彼女の人生経験となり、そこから様々なことを学びます。自分を見つめ直し、他人を見つめ直し、そして成長していきます。
そんなシェールの姿は、原案となった小説『エマ』のヒロインであるエマと重なります。これは、このテーマがいかに普遍的であるかの証拠ともいえます。自分は正しいものの見方ができているか、シェールのように改めて世界を見回してみると、新たな発見があるかもしれません。