シナリオ・センターが伝える「14歳からの創作ノート」で創作しよう!

半世紀前、シナリオを教える教室が開校

 シナリオ・センターは今から50年以上前の1970年に創設されました。映画やテレビドラマの人気が出てきた頃でしたが、まだプロのシナリオを書く人は少なく、それらのお仕事をする人材の養成が急務だったこともあります。

当時、映画会社に勤めていた新井一(あらい はじめ)さんは、会社を辞め私財を投じてシナリオを教える教室を始めました。当時ではとても画期的なことだったそうです。

 新井さんは、「何を書くかは個人の問題。それは教えることは出来ないが、どう書くかのノウハウを教えることはできる」と考えて、当時の作品を分析し、独自のメソッドを開発しました。また単に需要があったからだけではない理由もありました。

当時の人々はみな否応なしに戦争に巻き込まれて少年時代や青年時代を過ごして育ちました。戦争前はみんながあまり考えないで、人の言うことを鵜呑みにしていることが多かったことから、書いたり創作したり、つまりはよく考えるということの必要性を感じたのだそうです。プロに限らず、だれにでもシナリオを書くことを通じて考えてもらいたいと思ったのです。

そしてこの教室から、映画、テレビドラマはもちろん、マンガ、ゲーム、アニメのシナリオライターがたくさん輩出されていきました。

新井一樹さんの進路

創設者、一さんの孫、新井一樹(あらい かずき)さんは、さぞかし子どもの頃からシナリオ作りに馴染んできたかと思いきや、意外にもスポーツ少年でシナリオや創作とはあまり縁がなかったそうです。

ただ考えることは好きだったそうで、大学の授業で哲学やギリシャ悲劇を勉強していた時、「人はなぜ生きるのか?」と、ふと考えたそうです。ずっと自問自答を続けた後で、「なぜ生きるかは、いくら考えても答えはでない。だがどうあるべきか、どう生きるかは考えることが出来るのではないか?」と思うようになりました。

シナリオ・センターの教えに「作家の眼がないと、シナリオは書けない」というものがあるそうです。 例えばテレビドラマはまさに人間の世界の出来事。作家の眼を通して人間を観察して、シナリオを描くのです。物語づくりを通して、自分とは異なる人物の性格や考え方・境遇・人間関係など、いろんな角度から想像できるようになります。

シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート

 新井さんは、「シナリオを勉強し創作して書くことで、作家の眼が養えるのではないか?」と考えました。 まさに逆転の発想ですね。

 そのことに気付いた新井さんは、本格的にシナリオを教える道に入ります。また、大人だけでなく、子ども達にもシナリオを教えることを始めました。最初は自分から近隣の学校に持ちかけ、その後シナリオの授業の評判が広がっていきました。今では、ある地区にて50校ほどで創作の授業を受け持っているそうです。

またシナリオ・センターでは物語づくりが好きな子どもむけに『考える部屋』というオンラインで参加できるシナリオ教室を開催しています。塾や習い事の機会はたくさんありますが創作の教室というのは珍しいですね。

創作にうち込みながら、どう伝えれば観客に伝わるか、というプロの表現技術を、楽しみながら学べます。創作は、その人らしく生きる助けにもなるそうです。

 さらに新井さんは、仕事を通じて養ったプロの作家・脚本家のシナリオの書き方のノウハウを一冊の本、シナリオ・センター式 物語のつくり方』にまとめました。

ここには物語を創作するための創作技術がふんだんに盛り込まれていて、たちまち好評を得ました。しかしこの本は大人向けだったため、子ども達にも創作を楽しんでもらいたいという思いから、シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート』という本を執筆します。タイトルのとおりターゲットも14歳という大人と子どもの中間の揺れる世代にしました。

「ただ、大人向けの本を子ども向けに単純に書き直すようなことはしたくなかった」と新井さんは述べます。そんな工夫の例として、この本には先生と三人の中学生が登場します。

一人目は書きたいけどモヤモヤしてどう書いていいかわからない男の子。二人目は書きたいけど部活や塾で忙しくて書けない男の子。そして書いてはいるけどうまく書けない女の子です。この三人はかつてシナリオを教えてきた子ども達がモデルだそうです。創作をしたいと思っている人は、この子ども達のいずれかに当てはまるのではないでしょうか?

子ども達へのメッセージ

 「創作が好きなみなさんであれば、どうやって書けばいいかという悩みは解決出来る問題です。この本を参考にしてみてどんどん書いてください」と新井さんは語ります。また、創作はしていないみなさんにも、「友達とあれをしたい、あそこへ遊びに行ってみたいなことを考えるだけでも創作です。知らず知らずのうちに誰もが想像したり妄想したりして創作しています。意識的に頭の中でキャラクターを作って相手の立場になって動かしてみる。そんなことから始めてみてはどうでしょうか」とメッセージを送ってくれました。「恥ずかしかったら誰にも見せなくてもいい。まずは始めてみてほしい」とのことです。

創作って楽しいことです。そして創作を通して人を観察することは作家の眼を養い、相手の立場を理解することができたり、何より自分の進路や生き方を考えるきっかけになるかもしれません。そうなれば素晴らしいことだと取材を通して感じました。

(筆・鹿島ジル)

参考URL

「大人になっても「書くこと」を好きでいたい君へ シナリオ・センターが伝える 14歳からの創作ノート」

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「プロ作家・脚本家たちが使っている シナリオ・センター式 物語のつくり方」

https://amzn.to/4ehLcYm

ジル鹿島 登録者

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