『レベッカ』のあらすじ
物語は、主人公である「わたし」がモンテカルロのホテルで大金持ちの英国紳士マキシムと出会うところから始まります。
二人は恋に落ちるのですが、マキシムは一年前にヨットの事故で妻を亡くしたばかりでした。
「わたし」は後妻としてマキシムの屋敷に住み、女主人として日々を過ごすことを決意します。屋敷には多くの使用人がおり、その人々をうまく「使う」のが「わたし」の役目でしたが、経験のない彼女は戸惑うことばかりです。
更に悪いことに、使用人達は「わたし」をなかなか受け入れてくれません。特に使用人頭は「わたし」を的のように扱います。その理由は、マキシムの前妻レベッカを慕っていたから。
レベッカが使っていた部屋、レベッカの好きだったもの、レベッカの選んだ品々、そして美しいレベッカの肖像画。既に死んでいるにもかかわらず、お屋敷にはレベッカの気配が溢れています。
それまで平凡な暮らしをしてきた「わたし」はどんどんと目に見えないレベッカの気配に追い詰められていく……。
『レベッカ』のここが面白い!
この作品の面白い部分はいくつかありますが、まず最初に挙げられるのは、物語の語り手もつとめる主人公の名前が最後まで明かされないこと。
ヒロインは一貫して「わたし」だったりド・ウィンター夫人、などと呼ばれ続けます。この名前を持たない、という設定が物語を格段に興味深くしてくれています。
更に、読み始めたころには普通のロマンス小説のように思えるのに、だんだんとサスペンスミステリー小説へとジャンルが変貌してくれるのも面白い部分です。
長年、世界中の様々な人々によって読まれ続けた傑作です。決して短いお話ではなく、複雑に絡み合う人間関係や心理描写から難しいと思うこともあるかもしれませんが、先の展開が気になって途中から一気に読み進められてしまうと思うので、是非チャレンジしてみて下さい。
『レベッカ』と合わせて読みたい!
『レベッカ』を読み終えて「もっと読みたい!」という気分になった方のために、『レベッカ』と関係のある作品を二つ紹介します。
■『ジェイン・エア』
一つ目は『レベッカ』同様にイギリスの女性作家シャーロット・ブロンテが書いた小説『ジェイン・エア』(またはジェーン・エア)。
こちらは1847年に出版され、現在でも多くの人に読み継がれているイギリス文学の正典といわれる作品の一つです。
孤児であるヒロイン・ジェインが自分の真の居場所を見つけるべく、様々な場所に行き様々な人との出会いと別れを繰り返していく物語なのですが、『レベッカ』はこの『ジェイン・エア』を基にして作られた小説です。
『レベッカ』を面白いと思ったなら、次はそのもとになった作品を読んでみるのはいかがでしょうか?
■『イニシエーション・ラブ』
もう一つ紹介したいのが、日本の男性作家・乾くるみによる小説『イニシエーション・ラブ』です。
読み始めた頃には単純なラブストーリーに思えるのに、読み進めていくうちにミステリー小説の要素が出てくるという構成の小説で、『レベッカ』と共通する部分が多数登場します。
さらには小説の中でも『レベッカ』が主人公の会話に登場するなど、『レベッカ』を読んだ人だからこそ楽しめる要素が散りばめられています。こちらは短い小説なので、気負いすぎずに読み進めることが出来ますよ。
どちらの作品も映画化およびドラマ化されてはいますが、原作の方が何倍も面白いので、小説で読むことをおすすめします。