「これが男の出来るベストなことか?」
(Is this the best a man can get?)
カミソリを販売するアメリカの会社ジレット(Gillette)が2019年1月に公開したCM動画が、世界で話題になりました。
「私たちは信じる:ベストな男の出来ること」(We Believe: The Best Men Can Be)とタイトルのつけられたこの動画は、You Tubeで公開されてから約1ヶ月間で3000万回近く再生されています。
この動画にはどんなメッセージが隠されているのでしょうか?
動画の前半では、今までの男性の行動やイメージが描かれています。
イジメに遭い泣く少年、そんな少年や家具が壊れるのも気にせずに家の中を走り回る男の子達。テレビに映し出されるセクシーな女性を見て口笛を吹く男性のアニメに、家事をする女性の尻を鷲づかみにする男性のコント、ビキニの女性と騒ぐアーティストのミュージックビデオ、そしてそれを見る男性たち。とっくみあいの喧嘩をする少年達を見て、大人達は昔から変わらない「男の子はいつまでも男の子だ」という言葉を言い訳にしています。
動画の中盤からは、男の中のベストな部分を信じているから、と時代に変化が訪れていることをアピールしています。
「正しいことを言い、正しい行動を取ろう」というナレーションと一緒に、その例が動画内では提案されています。パーティーで「笑えよ」と詰め寄る男性と、戸惑う女性。そこに、仲裁に入る男性。町中で好みの女性の尻を追いかけようとする男性を止めに入る男性。喧嘩の仲裁に入り、握手させる男性。鏡に向かって「私は強い!」と娘に言わせるお父さん。とっくみあいの喧嘩をする少年達や、町中を走り回り少年を殴ったり蹴ったりする少年達を、止めに入る大人の男の人。
そして動画は、「いま、その行いを見ている少年達は、近い未来、大人の男になるのだから」という力強いメッセージで終わります。
動画への反応は?
ではこの動画を見た世界中の人はどう感じたのでしょうか?
実は、世界中で意見は真っ二つに分かれています。
動画が公開された直後は、動画を絶賛する声が多くありました。しかし、時が経つにつれて、批判的な意見が増え、今ではほぼ半々と言って良い状況に。
「ジレットが男女平等を目指すフェミニズム運動に媚びを売った」などと受け取られ、ジレットの商品を買わないボイコット運動がはじまったり、既に持っているジレット社のカミソリをゴミ箱やトイレに捨てる動画や画像をSNSにアップする人々が現われたりしてしまったのです。
こういった批判的な態度を取ったりコメントをした大半は、男性でした。
ジレット社の思いは
そもそも、ジレット社はどうしてこのような動画を作成したのでしょうか。
ジレット社はカミソリの会社、つまりは男性が一番のお客様です。そんな男性が否定的な意見を持ち、商品を買わない、と思ってしまうような動画を作ることは会社にとって損になるとは思いませんか?
実はジレット社、この動画を公開する前からこのような結果になることを予想していました。
この動画でジレット社が目的としていたのは、動画の内容が話題になること、人々が賛成や反対などの意見を持って議論すること。議論することが社会に変化をもたらす力を持つ、大事なものだと考えていたのです。
社会に変化をもたらしたい理由は一つ。次の世代を担う若者や子どもたちがより良い社会を生きるためです。今のお客様を手放してでも、次の世代のために良い社会を作ろう、というジレット社の思いが、この動画に込められていたのです。
更にジレット社はこれから三年間、若者を支援する団体に毎年100万ドル寄付することも発表しています。
男らしさって、何だろう?
みなさんは「男だからしょうがない」「男はそういう生き物なんだから」などと言われた記憶はありますか?
それはどんな時ですか?喧嘩に勝ったとき?運動が出来たとき?いろんな女性に下心を持ったとき?
では反対に、「男の子なんだから」と言われたことはありますか?
喧嘩に負けてしまったとき?泣いてしまったとき?弱さを見せたとき?
「男の子なんだから」と責められたり注意されたりする毎日は、辛くありませんか?
「男らしくいるため」に、無理をした経験はありますか?
「男らしくいるため」に、「自分らしさ」を押し殺したことはありますか?
男らしさって、何だろう?この機会に一度、じっくり考えてみるのはどうでしょう。
参考文献
https://www.bbc.com/news/newsbeat-46874617
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190116-00010000-huffpost-int