少しずつ多様化されてきた! 第91回アカデミー賞

今年も開幕! 年に一度の映画の祭典

現地時間2019年2月24日、毎年恒例の映画芸術科学アカデミーの主催する映画賞、第91回アカデミー賞授賞式がハリウッドのドルビー・シアターで行なわれました。

30年ぶりに司会者なしで行なわれた同賞でしたが、そのおかげで映画作品自体によいフォーカスが当てられ、授賞式の時間自体は短く、進行もスムーズに。中継番組の視聴率も向上するなど、司会者なしという形が結果として吉と出ました。

レッドカーペットで最も話題をさらったドレス

授賞式の前の恒例は、会場前のレッドカーペットできらびやかに着飾った参加者達のファッション。

今年のベストドレッサーとして話題をさらったのは、歌手としても活躍し、ブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』で数々の賞を受賞している俳優のビリー・ポーター

チュチュのようにふわりと広がった黒のスカート、ちらりと見える襟元や袖のフリルなど、フェミニンな雰囲気を、黒のタキシードガウンとシックな蝶ネクタイできっちりと引き締めたハンサムなスタイルで凜々しいポーズをとった様は世界中で話題をさらいました。

プレゼンターにも人気者が集結

司会者がいない代わりに今年のプレゼンターには総勢56名が起用されました。

中でも存在感を放っていたのはアメコミ映画出演者。今年度最多4部門を受賞した『ブラックパンサー』の出演者チャドウィック・ボズマン、マイケル・B・ジョーダン、ダナイ・グリラ、アンジェラ・バセット、トレヴァー・ノアが集結。同じマーベルヒーローでは『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンズ、『アントマン』のポール・ラッド、『キャプテン・マーベル』出演予定のブリー・ラーソンとサミュエル・L・ジャクソン、『マイティ・ソー バトルロイヤル』に出演したテッサ・トンプソン、『スパイダーマン・ホームカミング』で悪役を演じたマイケル・キートンが登場。更に、DCコミックヒーロー『アクアマン』の主演ジェイソン・モモアもプレゼンターを務めました。

昨年の映画界で話題をさらったもののノミネーションは逃した『クレイジー・リッチ!』からもコンスタンス・ウー、ミシェル・ヨー、オークワフィナがプレゼンターとして登場し、存在感を見せつけました。

最もオスカー像を獲得したのは?

今回のアカデミー賞で最多部門受賞したのは、日本でも爆発的にヒットしている『ボヘミアン・ラプソディー』でした。伝説的ロック・バンド「クイーン」のボーカル、フレディー・マーキュリーの半生を描いた映画は世界中の人々の心を掴み、主演男優賞、音響編集賞、録音賞、編集賞の4冠に輝きました。

主演のラミ・マレックの「単なるモノマネ」とならなかった魂の演技は世界中で絶賛されており、納得の受賞です。マレックの両親はエジプトからの移民で、マレックは家族の中で初めてのアメリカ生まれ。主演男優賞を白人以外の男性が獲得したのは実に18年ぶりでした。

「初」づくしとなった受賞結果

数年前まで白人ばかりが受賞者を占めていたために「白すぎるオスカー」と揶揄されていたのとは一転、今年度は受賞者の人種が多様化し、それによって多くの快挙が誕生しました。

主演男優賞のマレックはアラブ系としては初のオスカー受賞。

グリーンブック』での演技で助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは2年前にも同賞を受賞していて、同じ部門で初めて2度以上オスカーを獲得した黒人俳優となりました。

外国語映画賞、監督賞、撮影賞を受賞し3冠となった『ROMA/ローマ』は動画配信サービスNetflixが手がけた作品で、配信をメインとした映画として初の快挙です。

監督賞を受賞したアルフォンソ・キュアロンは5年前にも同賞を受賞しており、ラテン系で初めて2度以上オスカーを獲得した監督となりました。

また、『ブラックパンサー』で衣装デザイン賞を受賞したルース・E・カーターは、黒人女性で初めてこの賞を獲得した衣装デザイナーとなりました。

更に作曲賞、美術賞も受賞した『ブラックパンサー』はマーベル史上初のオスカー受賞作品に。

短編アニメ映画賞を受賞した『Bao』はピクサースタジオ史上初の女性、アジア人の監督作品でした。

目立った黒人たちの躍進

Photo by Sidney Pearce on Unsplash

今年度の受賞作品の中で目立ったのは黒人に関連した作品でした。

脚色賞を獲得した『ブラック・クランズマン』は白人至上主義団体KKKに潜入した黒人警察官の史実を基にした物語で、黒人であるスパイク・リー監督がメガホンを取りました。

助演女優賞を受賞したのは『ビール・ストリートの恋人たち』のレジーナ・キング。彼女も黒人の女優です。無実のレイプ容疑で逮捕されてしまった婚約者を救おうと奮闘する主人公の母親を演じきりました。

作品賞、助演男優賞、脚本賞の3部門を受賞した『グリーンブック』は、黒人差別のまかり通った時代に特に差別がひどかった南部をツアーする黒人ピアニストの白人の運転手の物語です。

今年度最多受賞の『ブラックパンサー』はマーベル史上初の黒人スーパーヒーローを主人公とした映画でした。

アニメ作品でも多様性が

今年はアニメ映画でも多様性が見られました。ここ6年間ディズニーが独占していた長編アニメ映画賞を奪還した『スパイダーマン:スパイダーバース』の主人公はヒスパニック系の少年マイルスで、彼が町のヒーローであるスパイダーマンへと成長していく過程が描かれ、彼の仲間として女性ヒーローや日系の女子高生ヒーローなどが登場します。

また、短編アニメ映画賞を受賞した『Bao』はアジア人の女性が主人公で、命が宿ってしまった彼女の手作り肉まんとの心温まる家族の物語です。今年度は実写作品と同じようにアニメ作品でも多様性を見ることが出来ました。

女性へのスポットライトも継続

ここ数年ハリウッドでも叫ばれているのが女性の活躍です。今年も残念ながら監督賞に女性のノミネートはありませんでしたが、女性にもきちんとスポットライトは当たっていました。

最多ノミネートで3部門受賞となった『ROMA/ローマ』はメキシコを舞台に中流家庭で住み込み家政婦をするクレオと彼女を雇っている一家の夫人、ソフィアを中心とした苦しくも美しい作品です。

短編ドキュメンタリー映画を受賞したのは『ピリオド 羽ばたく女性たち』で、こちらはインドで静かな革命を起こした女性達を追っています。

そして授賞式で圧巻のパフォーマンスを披露した歌手で女優のレディー・ガガは初主演映画『アリー/スター誕生』の主題歌で世界的にヒットしている「シャロウ」で歌曲賞を獲得し、この日の注目を集めました。

意外な受賞!?

この日最も人々の心を掴んだスピーチを行なったのが、『女王陛下のお気に入り』で主演女優賞を獲得したオリヴィア・コールマン。今年唯一の白人演技賞受賞者となりました。グレートブリテン王国の初代君主となるアン女王の寵愛を巡る2人の女性の物語で、気性が変わりやすい女王という難役を確かに演じました。

受賞者として名前が呼ばれた瞬間も、スピーチをしている間も終始一貫して受賞への驚きを隠せなかったコールマン。アカデミー賞では受賞の確率が高いと考えられている人が最前列や通路側などの壇上に上がりやすい席を指定されるのに対して、コールマンは少しばかり壇上に出づらい席を指定されており、彼女の受賞は本人だけでなく多くの人にとって嬉しいサプライズとなりました。

一方、残念なサプライズになってしまったのは作品賞を受賞した『グリーンブック』。黒人差別を描いた映画ながらも、「白人をヒーローにするために黒人を利用した」と一部で受け取られている本作の受賞に、多くの視聴者が落胆のメッセージをSNSに投稿しました。

会場にいた人々の中にも落胆した人はいたようで、『ブラックパンサー』のボズマンは明らかに納得していない様子を見せ、一部では『ブラック・クランズマン』のリー監督が怒りのあまり授賞式を途中退席しようとしたと報じられました。『グリーンブック』は黒人ピアニストの家族が映画への不快感を示したり、主人公の白人運転手を演じたヴィゴ・モーテンセンが黒人への蔑称を用いたことで謝罪したりするなどのトラブルも。

脚本執筆者の一人が主人公の実の息子であることや、授賞式最後の作品賞受賞時に壇上に上がったスタッフの多くが白人男性だった点からも、多様性を見せた今年度の授賞式の中では、少しばかり残念な締めくくりとなってしまったかもしれません。

黒木りりあ 登録者

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