男性の仕事?女性の仕事?

文責:高橋綾子


キーワード:男女雇用機会均等法

1985年成立。職場におけるあらゆる場面での男女の差別を禁止した法律。妊娠や出産による女性への不当な対応が禁止されたほか、女性保護のために設けられていた時間外や休日労働の規制なども撤廃された。またセクハラ防止についての事業主の管理責任も明記されている。


 工事現場の女の子

作業着やヘルメットなどを作っている、とある会社のこんなCMを見たことがあるでしょうか?

https://www.youtube.com/watch?v=QEIfLNAbjsM

いつか工事現場で働きたいと毎日作業を見に来る小さな女の子に建設現場で働いているおじさんがヘルメットと作業服をプレゼントしようとしますが、女の子はやおらカタログを取り出して「今は女性用があるのよ」と言い放ち、おじさんをびっくりさせます。数年後、成長した女の子が工事現場で颯爽と働く姿をおじさんが見つける…という 、ストーリー性のある印象的なCMです。少し前まで工事現場に女性の姿があるという光景は考えられないことでしたが、現在では実際に作業をする職人さんから監督まで少しずつですが女性が増えているようです。

1986年に施行された「男女雇用機会均等法」は、企業が募集、採用、昇進、解雇など仕事上のあらゆる場面において男女を平等に扱わなければならないことを定めた法律です。これまで「男の仕事」「女の仕事」として区別されてきた分野で、次第に男女どちらにも平等に門戸が開かれつつあります。

 

女性は気配り上手?

飛行機で乗客のために働く職業は現在日本で「客室乗務員」「CA(キャビンアテンダント)」「フライトアテンダント」などの名称が定着しましたが、以前は「スチュワーデス」と呼ばれており、女の子の憧れの職業の上位に選ばれ続けている職業でした。「actor(アクター、俳優)」に対する「actress(アクトレス、女優)」のように「stewardess(スチュワーデス)」は「steward(スチュワード、男性客室乗務員)」に対する「女性客室乗務員」の意味ですが、日本ではスチュワードが全くと言ってよいほどいなかったため、スチュワードという言葉も、あまり使われませんでした。現在では、より性差別感の少ない名称で呼ばれるようになった客室乗務員ですが、国内の航空会社で採用されているのはほとんど女性です。客室乗務員を目指す日本の男性は、国内では就職できずに海外の航空会社に就職しているという話もあります。

聡明な若い女性が颯爽と活躍する華やかなイメージとは裏腹に、客室乗務員の仕事は精神的にも肉体的にもハードなものです。業務は重い荷物を運ぶなど重労働も多い上に、機内でのトラブルにも対応する保安員の要素も含まれます。こうした点から男性の客室乗務員がもっと活躍していてもよいはずですが、海外の航空会社と違い日本で男性の客室乗務員が定着しないのは何故でしょう?何十年も女性ばかりだったため、なんとなく…という職業にまつわる一種の伝統もあるのでしょう。しかし、それ以外にも「人に対する細やかな気配りは男性よりも女性の方が得意である」という根拠のない思い込みや独特の感覚が日本人に根強くあるからではないでしょうか?

客室乗務員と同じように「看護師」「保育士」などの職業も以前は「看護婦」「保母」と呼ばれる「女性の仕事」というイメージの強い職業でした。これらも過酷な肉体労働であると同時に、患者や預かった子供達への適切な対応などの繊細な配慮が求められる職業という点で一致しています。客室乗務員と比べるとだいぶ男性の姿が目立つようになってきたとはいえ、まだまだ少数派です。他人への配慮ができるかどうかは性別によるわけではなく、あくまでも個人の資質です。ましてや「職業」として同じように訓練を受けた男女であれば、そこに差はないはずですよね。

 

思い込みが可能性を潰してしまう

女の子がスチュワーデスに憧れていたならば、飛行機の好きな男の子達は何に憧れていたかといえばパイロットかもしれません。少なくとも日本語にはスチュワーデスとスチュワードのように「操縦士」を性別で分ける言い方はありません。しかし「パイロット」と言われた時に皆さんの頭の中に漠然と浮かぶ人物は女性より男性の方が多いのではないでしょうか?実際男性に比べて女性のパイロットは圧倒的に少数です。日本航空の女性パイロット藤明里(ふじ あり)さんは女性パイロットが増えない理由の一つに「女性もパイロットになれるということ自体が知られていない」ことをあげています。「パイロットは男性、客室乗務員は女性」といった子供の頃からの思い込みが、多くの可能性を潰してしまっているのかもしれません。

男女は平等です。しかし全く同質という訳ではありません。藤さんは、自分にとって良い環境は自分で工夫して用意するものだとしながらも、特に女性が家庭を持った場合、仕事との両立についてパートナーや会社の理解と協力も大切だと語っています。自分で努力する面と、周囲の協力が必要な面の両方がある…パイロットという男社会の中で日本で初めて機長の地位に就いた彼女の言葉には非常に重みがあります。

 

安倍政権は「女性が輝く社会」を謳っていますが妊娠や出産のために女性が仕事を辞めなければならなかったり、責任ある地位に就きづらくなるという状況は変わったでしょうか?「一億総活躍社会」というスローガンの通り、皆が自分の能力を活かす場所を見つけやすくなっているのでしょうか?社会の仕組みが変わったのかという疑問と同時に、私達の意識は変わったのかという疑問もわいてきます。「男女の役割」についても、古いしきたりや思い込みにとらわれずに、それぞれが相手の立場を思いやり、理解しようとする姿勢を持つことが大切な第一歩です。

 


ミドリ安全 働く女性のための安全保護具「ワーク女子力」

https://www.midori-anzen.co.jp/ja/i_20171204.html

Newsweek日本版 「男がCAやったっていいじゃないか!」

https://www.newsweekjapan.jp/newsroom/2013/07/post-267.php

毎日新聞 毎日フォーラム 明日の日本へ「日本航空機長 藤明里さん」

https://mainichi.jp/articles/20150909/org/00m/010/023000c

首相官邸HP 「一億総活躍社会の実現」

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/index.html#m012

ayako_takahashi 登録者

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