文責:高橋綾子
キーワード「#Me Too」
性被害を受けた人々が声をあげようという世界的な運動。女性のための運動とは限らないはずだが男性が声をあげることに対する理解はなかなか進まず、「女性へのセクハラ問題」として取り上げられられる事が多い。
最近色々なセクハラ問題が世間を騒がせていますね。
昨年のハリウッドでのアカデミー賞授賞式では「#Me Too運動」に賛同した女優たちが華やかなドレスではなく、黒いドレスに身を包んで参加しました。このことがひとつのきっかけとなって、これまで口をつぐんでいたセクハラ被害者たちが世界各地で声を上げ始めました。
日本でも例外ではありません。ジャーナリストの伊藤詩織さんや、人気ブロガーのはあちゅうさんなどの性被害の告白は大きく取り上げられました。財務相の福田淳一事務次官は女性記者へのセクハラ問題で辞任しました。セクハラ問題は今、様々な角度から議論されるようになりました。オープンにしづらいものであった性に関する議論、特に被害を受けた側が声を上げることを妨げる(さまたげる)べきでないという風潮は、セクハラを減らすことへの大きな一歩です。
「セクハラ」という言葉
「ハラスメント」という言葉は日本語では「嫌がらせ」と訳されますが、実は単なる嫌がらせに留まらない場合も多く含まれます。セクハラを含め、「パワハラ」「モラハラ」など、「ハラスメント」という言葉で表される事案は、加害者側が被害者側の人格を思いやる事ができなくなった時に生まれるものです。相手を自分と同じ人間ではなく「部下」「目下の立場」として分類した結果として相手の尊厳を傷つけてしまうのです。
「男」「女」という分類は単なる性別の違いであって、それ以上でもそれ以下でもないはずですが、性別についての社会的な通念が、様々なハラスメントを生み出してしまうのかも知れません。
「逆」セクハラという言葉
「逆セクハラ」とは、主に女性が男性に対して性的な嫌がらせをする状態を指す言葉です。女性から男性への過剰なボディタッチであったり、男性を性的に侮辱(ぶじょく)するような発言、性的な行為の強要などが挙げられます。これらが咎め(とがめ)られるべき行為であることはもちろんですが、「逆セクハラ」という言葉には、少々違和感を覚えます。「セクハラ」が「男性から女性への嫌がらせ」という前提で、その「逆に女性が男性へ行うから」という発想で組み立てられている言葉だからです。
「男性から女性へ」のセクハラが割合的には一番多いことも事実ではあるものの、そもそも「セクハラ」は知っての通り「性的嫌がらせ」という意味であって、そこには男性も女性もトランスジェンダーも「誰から誰へ」ということについては関係なく含まれます。セクハラに「逆」という言葉が組み合わせられること自体が少々差別的な話です。
「男のくせに」がセクハラを隠す
みなさんは今まで「男のくせに」または「女のくせに」と、言われたことはあるでしょうか?
あまり公には使われなくなりつつある言葉かもしれませんが、昭和50年代生まれの筆者が子供の頃は、比較的普通に、大人が子供をしつける場面などにも登場する表現だったように思います。
「のび太のくせに生意気だぞ!」というジャイアンの名ゼリフ(?)のからも分かるように「~のくせに…だ」という表現は“~”の部分に入る相手の性質や立場と、それと一致しない“…”という要素や行動に対する反感を表しています。
「男のくせに」も「女のくせに」も、どちらも性別について「男はこう」で「女はこう」というイメージが決めつけていることが前提の表現で、特に「女のくせに」は、例えば政治家が発言したとしたら大問題になりかねない表現です。
最近では男女の役割の変化や、性の多様性を認めようとする社会の傾向にはそぐわないため、あまり使われなくなった表現だと思います。一方で「男のくせに」はどうでしょうか?「女のくせに」に比べて、少し許容される可能性が高いように感じはしないでしょうか?「男のくせにメソメソ泣くな」と言った場合、やや荒っぽい励ましや慰めと、受け止められることもあるかも知れません。「男は涙を見せないもの」「男は強くあるべき」という私達の固定観念*は、実は非常に強いものかも知れません。そんな環境で男性がセクハラを受けたとしたらどうでしょうか?
「男のくせにセクハラされるなんて、男らしくない」「男のくせにセクハラされたと騒ぐなんて恥ずかしい」と思う人はたくさんいるでしょう。 しばしば「セクハラ」は「女性が被害者になる問題」と誤解をされがちですが、男性が被害者になることもあれば、もちろん女性が加害者になりうることもあります。しかし、男性が声をあげることは女性と同じか、もしくはそれ以上に難しいことかも知れません。
*こていかんねん、決めつけた考えを持つこと。
セクハラは大人だけの問題ではありません。学校社会の中での性的な嫌がらせもあります。そういった発言や行動をしないことはもちろんですが、周りでそういう行為に気づいたときに「やめよう」と声をかける勇気も大切です!
参考URL
東洋経済オンライン 「男が受けるセクハラ被害が軽視される不条理」
https://toyokeizai.net/articles/amp/217929?display=b&_event=read-body
ハフィントンポスト 「セクハラ行司『男色じゃない』と弁明⇒IKKOが怒りの声 同性愛への認識不足を指摘」
https://m-huffingtonpost-jp.cdn.ampproject.org/c/s/m.huffingtonpost.jp/amp/2018/01/08/inosuke-ikko_a_23327985/?usqp=mq331AQECAEoAQ%3D%3D