5月はALS啓発月間
アメリカ合衆国では、毎年5月をALS啓発月間(ALS Awareness Month)としています。これは、ALSという難病について多くの人に知ってもらうことを目的としています。
病気について知ってもらうことで、治療法を見つける研究のための支援をしてくれる人が増えたり、ALS患者の方々をサポートしてくれる人が増えたりすることを願って、作られました。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは?
そもそも、ALSとはどのような病気なのでしょうか? ALSは、脳や末梢神経(まっしょうしんけい)から発せられた〈動け!〉という命令を筋肉に伝える「運動ニューロン」(運動神経細胞)が侵されてしまい、筋肉が動かしづらくなってしまう病気です。難病の一つに指定されています。
2016年に行なわれた調査によると、日本人では約9600人がこの病気と闘っています。多くの医師や研究者がこの病気を研究していますが、この病気の原因はまだはっきりと分かっておらず、治療法もまだ見つかっていません。
どんな症状が出るんだろう?
運動ニューロンが侵される病気、といわれてもピンとこない人もいるかもしれません。具体的に、どんな症状が出るのでしょうか。
ALSの患者さんの4人に3人が最初に気づくのが、手足の麻痺による運動障害、つまり手や足の筋肉の力が弱くなり、上手に動かせなくなることです。お箸が持ちにくくなる、重いものを持てなくなる、手足が上がらない、など、普段の生活で出来ていた当たり前のことが出来なくなるようになっていき、自分の身体の異変に気づきます。この症状が進むと、自分で動いたり、歩いたりすることが出来なくなっていきます。
残りの4人に1人が最初に気づくのは、球麻痺(きゅうまひ)という、舌やのどの筋肉の力が弱くなる症状。舌の筋力が弱まってしまうと、言葉を上手に話せなくなり、滑舌も悪くなります。そして舌とのどの筋力の低下で食べ物や唾を飲み込むことも上手く出来なくなり、むせることが多くなってしまいます。
食べ物が飲み込めなくなっていくと、チューブを通して栄養をとるようになることも少なくありません。
更に、呼吸障害もALSの症状の一つです。夜にたくさん寝ても眠った気がしなくなったり、頭が重く感じるようになったりするところから始まり、そのうち呼吸が苦しくて上を向いて眠ることが出来なくなります。症状が進むと、自分では呼吸できなくなり、人工呼吸器という機械をつけなければいけなくなってしまいます。
どんな人がALSになるの?
ALSは多くの場合、50代から70代前半の人に症状が出ます。しかし、若いからといってALSを発症しないわけではありません。また、男性と女性だと、男性の方がこの病気になる人の人数が多いです。
ALSの発症と生活環境はあまり関係ありません。このような傾向は、世界中で共通しています。
アイスバケツチャレンジを覚えていますか?
今から約6年前、アイスバケツチャレンジというものがインターネットを中心に流行ったのを覚えていますか?指名された人が次にチャレンジする人を指名してから、頭からバケツに入った氷水を浴びる、という企画です。
このアイスバケツチャレンジの目的は、ALSの研究支援の募金を呼びかけるものでした。この運動は単なるブームとなっただけではなく、きちんと成果を上げていて、この運動で集まった資金で立ち上がった研究プロジェクトがALSの治療に重要となる遺伝子を発見しました。
ALSは未だに謎の多い難病です。しかし、ほんの少しの「知りたい」「力になりたい」という気持ちで、一歩ずつ、確実に研究は進んでいます。皆さんもまずは、知るところから初めてみてはいかがでしょうか?
参考文献
ALS Awareness Month(英文)
http://www.whathealth.com/awareness/event/alsawarenessmonth.html
アイス・バケツ・チャレンジの寄付金で、ALS研究に大きな成果 -HUFF POST
https://www.huffingtonpost.jp/2016/07/30/ice-bucket-challenge_n_11275150.html