2018年8月8日、末広がりの「八」が並んだこの日、東京渋谷区の青山学院大学で「平成三十年夏巡業 大相撲 渋谷青山学院場所」が開かれました。
KnotitiA.comではこの夏巡業を前日から密着、取材しました。
1記事目は全体の総括です。
(取材・撮影 樋口夏穂)
朝7:50
会場となる青山学院大学記念館(体育館)に到着。台風が迫り風とともに吹き付ける雨の中、そこには多くの傘の花が。すでに多くの人が開場を待ちわびながら列を作っていました。
晴れていたならばこのエリアには色鮮やかなのぼりが立ち並んでいましたが、台風により倒れて事故が起こらないよう、撤収されていました。そのため前年に比べると少し寂しかったかもしれません。
朝8:00 開場
会場入口横では青山学院大学のマスコットキャラクター、「イーゴ君」がお出迎えをしていました。隣ではお客さんを呼び込む一番太鼓がタタン、タカタン、とリズムの良い軽快な音を響かせていました。
イーゴ君:キリスト教の聖書に登場する動物の一つ、ワシ(イーグル)をモチーフに、青学カラーの濃い緑、服は牧師が着る正装のガウンをあしらっています。1999年、大学開設50周年を記念して誕生しました。
会場の一角では握手会が始まりました。6人の十両力士や幕内力士が多くの来場者が列を作りました。そして写真の右端に映るのは渋谷といえば、のマスコットキャラクター。東横ハチ公くん。東横百貨店の横に立つ忠犬ハチ公をモチーフにしています。
このあと同じく渋谷に拠点を持つNHKのマスコットキャラクター、どーもくんも登場。多くの人と握手をしました。
また今年7月の西日本豪雨災害を受けて、募金活動を行っていました。握手をしたあとに募金箱があることを知った多くの人が引き返したり、列に並び直すなどして募金をしていました。
そして開場とともに場内には幕下力士の稽古が行われていました。30名ほどの力士が入れ替わり立ち替わり相手を変えながら積極的にぶつかり合っていました。土俵のそばでは貴乃花親方などが稽古を見守ります。
その後10時頃からは幕内力士が入り、ここからは場内アナウンスで「胸を貸すのは○○、ぶつかるのは○○」と紹介を始めました。
12時も近くなると序二段と呼ばれる階級の力士から幕下までが取り組みが始まりました。
12:40 相撲甚句
相撲甚句(すもうじんく)とは、相撲の型などを詩で唄うこと。代わる代わる6人の力士がマイクを片手にルールなどの内容を唄う。化粧まわしをつけた正装の姿で唄う。浪曲のような独特の節回しがあるので、ファンに取っては力士の美声が聞けるチャンスなのかもしれません。
12:50 初切
初切(しょっきり)とは、相撲の禁じ手(打撃や物を使うなど、やっては行けない行為)を面白おかしく紹介する見世物。江戸時代から行われています。毎回体の大きい力士と小さい力士がペアになって行いますが、息があってないと面白くすることができません。簡単に表すならば、土俵上のコントでしょう。
お客さんはもちろん、筆者も写真を取りながら大笑いしてしまいました。
13:10 櫓太鼓 打分
櫓太鼓(やぐらだいこ)とは、相撲の開催を知らせる太鼓。本来は高い櫓の上で打たれます。今回は三種類の演奏を披露しました。
かつての理事会で招集合図に使われたのは寄せ太鼓。
清めの太鼓と言われ、五穀豊穣・天下泰平を祈る際に叩かれた一番太鼓は、かつて真夜中2時から3時に打たれていました。現在では騒音防止条例に抵触するため、開催日の朝短い時間のみ演奏されるそうです。
最後のはね太鼓は相撲が全て終了すると同時に打たれ、「ごきげんようお帰りください。また明日のおいでをお待ちしてしております」と皆に向かって打たれます。軽快な連打から始まるのが特徴です。
櫓太鼓の披露が終わると、ついに十両力士の相撲が開始。幕下までの力士とはまた一味違う迫力やハラハラがあり、観客からの歓声もひときわ大きくなりました。平日ということもあり女性が多かったからか、黄色い歓声や、家族で来場した子どもの可愛らしい黄色い歓声も目立つようになりました。
14:00 横綱土俵入り
ついに横綱の三人が登場。白鵬、稀勢の里、鶴竜がそれぞれ土俵上に上がりました。三人一組で上がるのですが、左が太刀持ち(たちもち)、右が露払い(つゆはらい)と呼ばれます。土俵に上がるとそれぞれが雲龍型(うんりゅうがた)または不知火型(しらぬいがた)と呼ばれる決まった形の土俵入りを披露します。
白鵬は今回は取り組みが無いため、ここでしか見ることができませんでした。
土俵入りが終わると来賓挨拶がありました。会場となった学校法人青山学院の理事長、堀田宣彌氏が「台風の中行ってよかったと思ってもらえれば」と挨拶しました。
二人目に登場したのは青山学院と縁の深い、俳優の高橋克典さん。自身の青山学院とのルーツなどを語り、「めったにない機会なので楽しんで」などと言っていました。
14:50 横綱取り組み
待ってましたとばかりに登場した三役。三役それぞれ東と西に分かれ、三人ずつ四股を踏みました。この頃には場内はほぼ満席。一旦席を離れた人もこの頃までには戻ってきていました。粘り強い取り組みを見せ、場内からは老若男女多くの人のオオーッという歓声が聞こえました。
結びの一番、と呼ばれる、その日最後の試合。鶴竜と稀勢の里がぶつかりました。鶴竜が稀勢の里を土俵際に追い詰め、片足が上がり押し出されるのかと思いきや、粘り強く押しとどまり、勝ったのは反対側まで押し返した稀勢の里。流石横綱、と言えるような取り組みでした。
15:00 弓取式
巡業の日、一番最後に行われるのが弓取式。今回は春日龍が努めました。これは勝った力士に変わり勝利の舞として行われるものです。弓を上下に揺すったり、左右に大きく振り回したり、弓の先端で土をすくうような動作も行いました。弓を大きく振り回す際には会場から大きな歓声が上がりました。
これが終わると千秋楽。全てのプログラムが終了となります。
巡業は力士たちが自分の住む地域等に出張してくれる、少し特別感がありワクワクするイベントです。人気力士が間近で見れてしまうのが一番の魅力かもしれません。
次回は巡業の前日から密着した様子等を紹介します。
参考URL
渋谷青山学院場所ホームページ
青山学院大学 大学校章・マスコット
https://www.aoyama.ac.jp/outline/visual_identity.html